亡くなった家族の借金の過払い金請求を個人でやるときの注意点

亡くなった家族の借金の過払い金請求を個人でやるときの注意点

「えっ!お父さん、こんなに借金していたの?」 「亡くなった妻が私に内緒で〇百万円も借金を返していたけど返さないといけないの?」

ご家族が亡くなってから借金をしていたことが分かった方も少なくありません。もしかしたら、その借金に過払い金が発生している可能性があります。たとえ亡くなった方の借金であっても、ご家族であれば過払い金請求をすることはできます。

ただし、個人で請求する場合には注意が必要。過払い金を取り戻すために、かえって多額の借金を背負ってしまう可能性もあるのです。また、そのタイミングは故人の死後3カ月以内と時間制限もあります。そこで、亡くなった家族の過払い金請求を自分でする場合の注意点についてお伝えします。

亡くなった家族が借金をしていたが、すべて完済しているケース

民法第896条では、相続人は故人(被相続人)の一切の権利義務を継承すると定められています。故人の借金も相続の対象となりますので、過払い金が発生していれば相続人が貸金業者に請求することができます。

亡くなってしまった家族の借金がすべて払い終わっている場合、完済した日から10年以内であれば、ご家族が代わりに過払い金請求をすることができます。

2010年(平成22年)の改正により、利息制限法を上回る金利での貸付が禁止となったこともあり、それ以前から借りていたのであれば過払い金が発生している可能性は非常に高くなります。

亡くなった家族に返済途中の借金があったケース

注意が必要なのは、亡くなった家族の借金がまだ返済途中であった場合です。 「相続」というのは「プラスの財産だけ相続します」というわけにはいかず、マイナスの財産も引き受けることになります。

*借金 *住宅ローンや車のローンなど *滞納・未払いの税金 *医療費

これからのマイナス財産も相続するわけですが、借金の場合、引き直し計算をしてみたら残債よりも過払い金のほうが多かった…という場合もあります。

相続放棄とは

過払い金より借金の残債や他のマイナス財産のほうが多い場合、相続を「放棄」するという方法もあります。もちろん、相続放棄をすればプラスの財産をもらう権利も放棄しますので、すべての財産をきちんと調べたうえで、最終的に放棄をすべきか決めるのが良いのではないでしょうか。

亡くなった家族の過払い金請求をするときの流れ

1.借金の調査

まずは貸金業者に連絡をして「取引履歴」を取り寄せましょう。 郵送でも可能です。電話で「取引履歴開示請求書を送ってください」と言えば送ってくれますので、必要事項を記入して返送すれば、1週間から1カ月前後で送られてきます。

2.過払い金の計算

取引履歴が届いたら、さっそく過払い金の計算をしてみましょう。 計算の仕方は、ネットで「過払い金 引き直し計算」と入力して検索すれば、詳しいやり方が紹介されていますので、それらのサイトを参考にいくら請求できるかを算出してみてください。

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3.遺産分割協議をし、過払い金の分け方を決める

相続人が何人かいる場合は話し合いを開き、誰が過払い金を相続するかを決めましょう。 通常の法定相続分であれば、該当者全員がその配分に合わせて過払い金の請求を行うことになります。

*配偶者(妻もしくは夫)・・・1/2 *子供・・・1/2÷人数

ただし、上記の配分と異なり特定の相続人、たとえば「配偶者のみ」「長男のみ」がすべての過払い金を受け取る権利を相続するのであれば、「遺産分割協議書」を作成し書面として残しておくことで、過払い金を取り戻すことができます。

相続人が過払い金請求をするときに必要な書類

戸籍謄本等

法定相続人の範囲を明確にするため、故人が生まれたときから死ぬまでに本籍地を置いた市区町村の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍が必要になります。本籍地を何度か移しているようであれば、その分を用意しなければなりません。

遺産分割協議書

法定相続分と異なる場合に必要となります。相続分の譲渡証書や債権譲渡証書などでも可能。

相続放棄申述受理証明書

他の法定相続人が相続を放棄し、すでに相続権がない場合は、家庭裁判所で「相続放棄受理証明書」を発行してもらわなければなりません。

遺言書

法定相続分と異なり、ある特定の相続人だけが故人のすべての財産を相続するといった場合、その遺言書が必要となります。

相続人が過払い金請求する際の注意点

故人の代わりに過払い金請求をする際、以下の3点に注意してください。

1. 貸金業者以外に銀行などから返済中の借金がないか? 2. 過払い金請求する業者に自分名義の借金はないか? 3. 故人が完済してから10年以上経っていないか?

他からの借金を他の相続人に背負わせることになることも

過払い金を請求する業者以外の金融機関などからの借入れがあり、まだ返済途中で残高がある場合は要注意。遺産分割協議で、特定の相続人だけが過払い金を受け取ると決めてしまった後に他からの借入れが判明すると、そのマイナス財産を他の相続人が引き継ぐことになってしまう可能性もありますので、分割協議をする前によく調べておきましょう。

同じ業者から自分が借入れをしているブラックリストに登録されることも

故人の過払い金請求をする業者からあなたも借入をしていて現在も返済中である場合には、「相続分についての請求です」ということをはっきりと伝えないと、過払い金の分であなたの借金の残りを清算してしまいましょうといった提案をされかねませんので注意が必要です。

3カ月以内でも過払い金請求後は相続放棄ができなくなる

本来なら相続するかどうかを決めるのは故人が亡くなってから3カ月以内です。ところが、過払い請求を開始してしまうと後から別のマイナス財産が判明しても、相続放棄をすることができなくなってしまいます。ですので、まずは相続する財産をよく調べてから過払い金請求をするかどうかを決めるようにしましょう。

まとめ

あなたが相続人であれば、故人が受け取るべき過払い金についても請求する権利はあります。 ただし、故人に代わって請求する場合、手続きが非常に複雑になります。 また、過払い金の相続には2つの期限があります。1つは相続するかどうかを決める期限となる「3カ月」。もう1つは過払い金請求の期限となる「10年」です。

通常の過払い金請求であれば個人でやるのもいいのですが、相続となると財産の洗い出しや手続きも複雑になり、しかも期限があるとなると個人でやるよりは司法書士や弁護士に依頼したほうがいいかもしれませんね。

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