保証人は過払い金請求をすることができるか?
消費者金融業者からお金を借りた人がお金を払えなくなったときは、保証人にところに督促が来て、本人の代わりに借金の支払いをするように求められます。 保証人が消費者金融業者から求められるままに利息を付けて借金の支払いをすると、その利息が利息制限法に違反する高利のときは過払い金が発生しますが、この過払金を請求できるのは保証人なのでしょうか、それとも本人なのでしょうか。
保証人でも過払い金は請求できます
ある人が消費者金融業者からお金を借りて、途中で払えなくなったとします。その時点で、契約書の利率では30万円の借金が残っていたものの、利息制限法が定める利率に基づいて再計算したところ、10万円の借金が残ったケース(第1のケースと呼びます)と20万円の過払い金が発生していたケース(第2のケースと呼びます)を前提に説明します。
第1のケースと第2のケースのいずれのケースでも、本人も保証人も、まだ借金は30万円残っていると誤解している状況ですので、消費者金融業者から督促された保証人は、消費者金融業者に求められるまま30万円を支払いました。
ところが、第1のケースでは、借金は30万円ではなく、法律上は10万円しかありませんので、保証人が30万円を支払った瞬間に20万円の過払い金が発生します。そして、第2のケースでは、法律上は既に借金はなくなり20万円の過払い金が存在していますので、保証人が30万円を支払った瞬間に50万円の過払い金が発生したことになります。
したがって、いずれのケースでも、保証人は、消費者金融業者に対し、過払い金を請求することができます。ただし、請求できる金額は、第1のケースでは20万円の過払い金の全額ですが、第2のケースでは50万円の過払い金のうち30万円だけになります。
なぜなら、過払い金請求は不当利得返還請求の一類型ですが、不当利得返還請求とは、法律上の原因なく利得を得た者に対し、それによって損失を受けた者にその利得を返還させる制度だからです。
つまり、第2のケースでは、確かに消費者金融業者は過払い金50万円の利得を得ていますが、保証人は30万円しか支払っていない以上、保証人の受けた損失は30万円にとどまるため、保証人が請求できる過払い金は30万円となります。
本人は過払い金請求することはできません
では、消費者金融業者から借金をした本人は、保証人の支払い後、保証人が過払い金に気付かなかったことをいいことに過払い金を請求することができるでしょうか。先ほど説明したとおり、過払い金を請求するためには、消費者金融業者の得た利得によって請求者が損失を受けることが必要です。
そして、保証人が30万円を支払ったことで損失を受けるのは保証人であって本人ではないことから、本人は過払い金を請求することはできません。ただし、第2のケースでは、保証人が30万円を支払ったこととは関係なく、本人が支払ったことで既に20万円の過払い金が発生していました。
この20万円の過払い金は本人の支払によって発生したものであり、まさに本人が20万円の損失を受けることで消費者金融業者は20万円の過払い金の利得を得るという関係に立ちます。そのため、本人は、第2のケースでは20万円の過払い金の請求をすることができます。
本人も保証人も、単独で過払い金を請求することができます
第1のケースでは、保証人が20万円、第2のケースでは、本人が20万円、保証人が30万円の過払い金を請求することができますが、それぞれが単独で勝手にやればよく、一緒に足並みをそろえて請求する必要はありません。
保証人が直接払ったのではなく、本人に金を渡して払ったとき
これに対し、保証人が消費者金融業者に直接払ったのではなく、本人に金を渡し、本人が消費者金融業者に払ったときはどうなるでしょうか。第1のケースでも第2のケースでも、発生した過払い金を請求できるのは本人だけであり、保証人は1円も請求することはできません。なぜなら、本人の名義で借金の返済がなされている以上、消費者金融業者との関係では、借金を支払ったのはあくまでも本人であって保証人ではないからです。
同様の理由から、保証人が消費者金融業者に直接払ったとしても、その方法が本人の名前で振込送金するというものであれば、発生した過払い金を請求できるのは本人だけとなります。 とはいえ、保証人は、本人に対し、発生する過払い金の有無や金額とは一切関係なく、消費者金融業者に支払ったお金の全額について本人に請求することができます。
なぜなら、本人の代わりに借金を払ってあげたわけですから、最終的に本人がそれを負担するのは当たり前のことだからです(法律的にはこれを「求償」と呼びます)。もっとも、保証人が既に過払い金を回収していたときは、本人に請求できる金額は回収した過払い金を差し引いた残りの金額となります。
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